• 『ヘブンノウズ 物語』発売おめでとうございます! 
    みなさま待望の最新刊にして最終巻を書き終えてのお気持ちを教えてください。
最後まで書けてほっとしているのと同時に、これでこのお話ともお別れなんだな、という寂しさも感じています。
それと三冊目の『赦罪』からものすごく間が空いてしまったので、読者の皆さまにはひたすら申し訳ないという気持ちでいっぱいです。お待たせしてすみませんでした。
  • ストーリーの核心に迫る今作ですが、ご執筆中、気をつかわれたこと、苦労したことを教えてください。
書きながら悩んだのは事件の真相がわかってからの、旭の感情の落としどころでしょうか。ほかは、渋澤先生って『変人だけど素敵な人』のはずなんですが、書いてるうちに「この人、読者さんの目にちゃんと素敵に見えるのかしら……」と不安になってきました(笑)。
  • 作中、赤坂の日枝神社が登場します。
    渋澤はここで作品の着想を得たとありますが、英田先生にもそのようなことはありますか?
着想はいろんなもの、いろんな場所から得ます。場所だったりテレビのニュースだったり、車の運転中だったり誰かとの会話だったり。でもそれ自体はあくまでも断片的なアイデアのひとつなので、そこから広げたり育てたりするのが大変です。
  • 今回も渋澤の博識ぶりが披露されています。『物語』では生命から原子まで成り立ちについてが多く語られています。量子もつれの部分はとても興味深かったです。英田先生のお気に入りの理論のようなものがありますか?
今回、蘊蓄話がすごく多かったですね(笑)。あとから長すぎるので削ったほうがいいかな、と思いましたが、生命の話はミツルの出生の秘密とリンクする要素だったので残しました。
量子論や量子力学などは難しすぎて、私自身は上っ面の部分しか理解できないのですが、物質って何? 現実って何? と不思議な気持ちになります。
この作品には幽霊や幽霊の見える人たちが登場しますが、量子力学も人の目には見えない原子や電子を扱う分野で、それらを渋澤に語らせることによって、不思議なもの同士が融合して調和していくような感じがして面白かったです。
  • 3作目の『赦罪』で旭と渋澤、ふたりが恋人になったこともあり、今回は糖分高めのお話でした!
    1作目からふたりを見守ってきた一番の人物は英田先生かと思いますが、書き終えてみてふたりの変化はいかがでしたか?

ラブシーン、頑張りました。あくまでも当社比ですが(笑)。最終的には渋澤におおいにデレてもらう予定だったので、ふたりの関係性は落ち着くところに落ち着いたという感じですね。
旭は照れ屋なんだけど大胆にもなれる子なので、そのへんは書いてて楽しかったです。書きながらこんな一面もあるんだな、と感心したり驚いたり。
途中、薫にもっと邪魔させたかったんですけど、残念ながらいい人ポジションで終わってしまいました。BLでは、本当にいい男は報われないんです(笑)。

  • 生きている人間と留まる幽霊、成長していく心と変わらない想い、そのような不変であるものとないものの対比が多く描かれていると感じました。全体を通して意識していたことはあったのでしょうか?

書いている時は、コンセプトやテーマ的なことは何も考えていなかったんですが、振り返ってみれば確かに対比が多いですね。
この作品に限ったことではないのですが、死が絡む話を書く時は「生きている人間は留まっていてはいけない」という気持ちをいつも持っています。
最初は旭の成長物語だと思っていましたが、旭を導いてくれる渋澤自身が、心情的にはずっと同じ場所に留まっていたわけで、むしろ渋澤のほうが重症でした。なのでこれは、渋澤の救済物語でもあったわけですね。

  • 今作で『ヘブンノウズ』は完結しましたが、本編中で出せなかったり削ってしまったエピソードがあれば教えてください。
渋澤の昔の恋人(デビュー時の担当編集者)は出せませんでしたが、渋澤が唯一、本気で恋した相手という設定だったので、登場させてみたかったですね。出せば恋愛面を波乱にできたはずなので。
でもそうなると旭はもっと可哀想なことになったので、書かなくてよかったのかな。
  • 『ヘブンノウズ 物語』は英田先生にとっても今年を締めくくる1冊となったかと思います。2014年はどのような年でしたか? また2015年はどのような年にしたいと思いますか?
今年は作家活動十周年ということもあって、これまでのこと、これからのことを考える機会が多かったように思います。
自分自身のこと、考え方、書くもの、書きたいもの、変化があったりなかったり様々ですが、少しでも満足のいく小説を書けるように、来年もいっそう頑張りたいです。
  • 最後に読者のみなさまにメッセージをお願いいたします!

ゆっくりしたテンポの、いつもとは違った雰囲気の作品を書きたいと思い、始まったシリーズです。
書けば書くほどどのキャラも愛おしくなり、渋澤邸にも愛着が増していき、自分もあそこに身を置いているようでした。なのでこれでお別れだと思うと寂しいです。

読者の皆さま、いつもありがとうございます。もしも心に何か残るものがありましたら、ぜひご感想などお聞かせください。それらが次の物語への糧になります。
最後までのおつき合い、本当にありがとうございました。